小さな子犬に早朝から起こされて寝不足に悩まされている人も多いだろう。それだけではない。マンションなどの集合住宅で犬を飼育するケースが増えている今、その鳴き声が近隣トラブルに発展するケースも少なくない。日に日に重要性を増しているこの問題も、子犬のうちから正しい接し方をすることで防げるという。さて犬をどうしつければいいのか・・独自の取材でお届けする。
1. 無視する
2. 音をさせる
3. おやつをあげる
4. その他
「うちの子犬は寝ているか、鳴いているかどちらかです。始終サークルから出して!と鳴いています。育犬ノイローゼになりそうです。。」
「人の姿が見えなくなるだけで吠えて吠えてもう止まりません。トイレにも行けません・・。」
「夜鳴きがひどくてまいっています。睡眠不足で家族全員フラフラです。」
噛み癖と並んで、多くの方が悩まされるのが、子犬の「泣く」「吠える」の問題です。 とても残念なことですが、始終鳴いたり、吠えたりしている子犬を目の前に、こんなはずじゃなかったのに・・どうして飼っちゃったんだろう・・というような声も聞こえます。
もしあなたが今、こんな気分だったら、次のように考えてみてください!
あなたの子犬は、親や兄弟たちと別れ、たったひとりであなたの家にやってきました。さびしいかもしれませんね。誰かにかまってもらったり、スキンシップをして欲しくてたまらないかもしれないですね。そんな気分のときに、人間を困らせてしまうほど一生懸命人間のぬくもりを求めようとするあなたの犬は、健康な心の持ち主です!
1日中ひとりぼっちでサークルの中にいても平気、スキンシップを全く求めず、遊ぶこともせず、小屋の奥にひきこもってばかり・・という方が心配なくらいです!
しかし、1日中鳴きっぱなし、吠えっぱなしでは困りますね。どんな対処をすればいいのか、順に見ていきましょう。
まずご紹介したいのが「絶対にやってはいけないこと」です。あなたは、こんな対応していませんか?
叱ったり、叩いたり、大きな音を立てて脅したり、犬に不快な思いをさせることによって、鳴いているのをやめさせようとはしていませんか?これはやってはいけません。
あなたは、何をやめさせたいのでしょうか?鳴いたり、吠えたりすることをやめて欲しいのですね。甘えたり、人間とコミュニケーションしようとすることはどうでしょうか?決して悪いことはないですね。むしろ、鳴いたり、吠えたりするのではなく、もっと望ましい形でなら、コミュニケーションしてくれることは、人間にとっても好ましいことですよね。
叱ったり、叩いたりすることで、犬は鳴かなくなるかもしれません。でもそのときには、人間とコミュニケーションすることまでやめてしまうようになるかもしれません。いつ叱られるかと、始終びくびく、人間の顔色をうかがってばかりいる犬になるかもしれません。「これ以上、叩いたり、叱ったりしないで!」とうなったり、噛み付いたり、あなたに対して攻撃的になるかもしれません。これでは困りますね。
鳴いたり、吠えたりしたときに、「どうしたの?」と応じたり、サークルから出してあげると鳴きやみますね。とにかく鳴き止んで欲しい!吠え止んで欲しい!と犬の要求に応じる前に、考えてみてください。 あなたが、犬の要求に応じることで、かまって欲しいときには、鳴けばいいんだ!吠えればいいんだ!と犬は確実に学習しています。そしてますます、かまって欲しいときに鳴いたり、吠えたりするようになります。
犬が鳴く・吠える --> 犬の願いが叶う --> 鳴く・吠える」を学習するこのときに大切なのは、人間は応じていないつもりでも、結果として犬が鳴いたり吠えたりした後に、犬の願いが叶うと、それを学習してしまうということです。
例)あなたが部屋を出た途端に、サークルの中にいた犬が鳴き始めました。用事が済んで部屋に戻ると、犬も鳴きやみました。
あなたは、用事が済んだから部屋に戻ってきたのであって、鳴いている犬をなだめようとして戻ったのではないですね?それでも結果的には、以下が成り立ってしまいました。
犬が鳴く --> 犬の願いが叶う(飼い主さんが部屋に戻ってくる) --> 「鳴く・吠える」を学習する(鳴けば飼い主さんが戻ってくると学習する)人間が意図してなくても、犬は「鳴けば飼い主さんが戻ってきてくれるんだな!」と勘違いして学習してしまうかもしれません。そして、ますます姿が見えなくなると鳴くようになりますね。
もしあなたの子犬が1日中ダンボールの中で過ごしているなら、一刻も早くサークルを買ってきて、周りの様子がよく見えるようにしてあげましょう。これだけのことで、鳴いたり、吠えたりしなくてもすむようになることは多々あります。
ひとけのない部屋にひとりぼっちにしないで!
人の出入りのない部屋に犬の生活するサークルやケージを置くのはやめましょう。家族が集うリビングや居間などにサークルを置いてあげるといいでしょう。人が近くにいることで、鳴いたり、吠えたりしなくてもすむようになるかもしれません。また、人間の生活の様子や、テレビの音や、いろいろな匂いに慣らすしつけの機会を与えてあげることは、社会化の点においても大切です。
サークルの中に、犬が安心して寝たり、休息したりするスペースはありますか?犬は、穴のようなスペースを休息場所とする習性があります。サークルの中にクレートを置いてもいいでしょう。犬が丸くなって寝ることのできる程度の大きさのダンボールを用意して、「コ」の字に置くとちょうど穴のようになりますね。その中にタオルなどを敷いてあげてもいいでしょう。犬が休みたいな、と感じたときに、自由にそこに出入りし、安心して休息できるような場所を確保してあげましょう。
サークルの中は、寒くないですか?暑すぎないですか?水がいつでも飲みたいときに飲めるようになっていますか?
犬も人間と同じように、寒ければより暖かい場所を探し、暑ければより涼しいところを探します。サークルよりサークルの外が快適であれば、サークルから出して!と要求するかもしれません。寒いときには犬用のヒーターを入れてあげたり、暑いときには直射日光のあたる場所を避け、風とおしのよいところにサークルを置いてあげるなど、サークルの中にいることが心地よいと感じる環境を整えてあげるようにしましょう。
ガムやおもちゃなど、犬が好きなものを一緒に入れてあげることで、サークルに良い印象を持ってもらうこともできます。
犬と遊びすぎたり、撫でたりしすぎると、犬をわがままにしてしまうのではないかと心配なさる方が多くいらっしゃいます。子犬は人間とのスキンシップの中で、人間との付き合い方を学んでいきます。犬と接する機会を作ってあげることはむしろ大切なことで、問題なのは「犬をかまい過ぎる」ということではなく、「それをいつするか」ということです。
甘えているときには、存分に体を撫でてあげたり、抱いてあげましょう。そのときに、耳やお腹、マズル(口の上)、手や足、爪やお尻、口の中・・いろいろなところを触ってあげるといいでしょう。それは、これから先、ブラッシングをしたり、歯を磨いたり、爪を切ったり、獣医さんに診察をしてもらったり、犬の健康管理にも役立ちます。
はしゃいでいるときは、たくさん遊んで、存分に楽しい時間を過ごしてかまいません。楽しく遊んで、運動して、その後サークルでぐーっすり寝てくれるといいですね。
それでは、いつ撫でたり、遊んだりしてあげればいいのでしょうか?「始めるタイミング」に気をつけましょう。
鳴いたり、吠えたりしているときには、無視をする(話しかけない、目をあわさない、触らない、サークルから出すなど犬の要求に応じない)ことを徹底しましょう。叱ることもしてはいけません。相手をしてもらった、と犬を喜ばせて、逆効果になってしまいます。
犬が鳴いていないときや吠えていないとき、あるいは、吠え止んだときに、声をかけ、サークルから出してあげるといいでしょう。こうすることで、鳴いたり、吠えたりしている限り何もいいことは起こらない、人間に相手をして欲しいときにこそ鳴いてはいけない、ということを学習します。
待っても待っても泣き止まないときに、人間が妥協してしまうとどうなるでしょうか?犬はしつこく鳴き続ければ人間が応じてくれる、ということを学習し、ますます鳴き続けることになります。一旦、無視をすると決めたら、一貫した態度をとることが必要です。
無視を始めると、一時的に前よりもひどく鳴いたり、吠えたりする時期がやってくることがあります。しかしこの時期を乗り越えると、「鳴いたり、吠えたりしても何もいいことは起こらないな」ということを学習します。反対に、この時期に人間の方が我慢できずに応じてしまうと、「しつこく鳴き続ければ人間が応じてくれる」ということを学習させてしまいます。
人間の姿が見えなくなると吠え出す、という犬の場合には、姿を消す直前に大好きなおもちゃやガムなどを渡すようにするといいでしょう。このときに与えるおもちゃやガムは、何でもいいというわけではありません。あなたが部屋を出て行ったことに気が付かないくらい夢中になってくれるものを与えることがポイントです。
このときに使うガムやおもちゃは、普段は与えないようにしましょう。こうすることによって、飼い主さんの姿が消えるといことは、いつもはもらえない大好きなものがもらえる楽しい瞬間になります。
戻ってきたら、与えたものはすぐに取り上げましょう。犬にとって大好きなものは、飼い主さんが姿を消している間だけ犬の手中にあるようにするのが効果的です。
「ちょっとトイレに行ってくるだけだから、大丈夫。すぐ戻るよ。」犬にこういう説明がしてあげられれば、こんなに鳴いたり、吠えたりすることはないかもしれませんね。
犬にそれを伝えてあげるにはどうすればいいのでしょうか?まずは、犬が鳴き出さない程度の時間だけ、姿を消すようにしましょう。鳴かずに待っていたら、戻ったときに誉めてあげてもいいですね。そして、姿を消す時間を少しずつ延ばして行けば、「姿が見えなくなっても、いい子に待っていれば必ず戻ってくる」ということを学習していきます。
あなたの犬にとって、ひっそりと静まりかえる部屋でひとり過ごす夜は、とても長いものかもしれませんね。夜鳴きに悩まされているなら、こんな対処ができます。
寝室が見える場所にサークルを置いてあげよう!
寝室がよく見える位置にサークルを置くことで、夜鳴きが緩和されることがあります。
テレビ・電気をつけておく
テレビや電気をつけっぱなしにしておくことにより、人間が起きている時間とのギャップが埋まり、夜鳴きが緩和されることがあります。もしこの方法で効果があがるのなら、徐々に、テレビのボリュームを下げたり、明かりを小さくしていけば、無理なく「誰もいない暗くて静かな夜」の環境に慣れていくことができます。
一緒の部屋で寝かせてもかまいません!
人間と一緒の部屋で寝かせると、犬をわがままにしたり、一人で寝ることができなくなってしまうのではないかと心配なさる方がいらっしゃいます。一緒のふとんで寝かせることは、必ずしもいいとは限りませんが、サークルや、ケージ、クレートを寝室に置き、そこで犬を寝かせることは問題ありません。多くの場合、それで夜鳴きが解消されます。
これには、いくつか注意することがあります。
注意1: 夜中に何回かトイレに連れていってあげよう!
体の小さい子犬は、まだ一晩排泄を我慢することができません。犬が一晩過ごすスペースにトイレがないのであれば、何回かトイレに連れていってあげましょう。犬はもともと、自分の休息場所を汚さないように、就寝する場所では排泄を我慢する習性があります。その就寝場所で、我慢できずに排泄せざるを得ない経験を積むことは、一体どこが就寝場所でと排泄場所なのか?混乱の元になるかもしれません。
注意2: 鳴いても無視しよう!
一緒の部屋で寝ているのにも関わらず、鳴いたり、吠えたりしたら?一貫して、それには応じないことが大切です。ここであなたが話かけたり、サークルやクレートから出したり、撫でたり、叱ったりすれば、「鳴いたり、吠えたりすれば、飼い主さんが自分に注目してくれる」と学習し、ますます鳴いたり、吠えたりするようになりますね。
人間が一貫した態度を取ることによって、「近くにいてくれるけれど、決して遊んではくれない、就寝時間はそういう時間なんだな」といことを次第に理解していきます。
お薦め!の就寝場所: クレートで就寝させる利点
犬のしつけの答えはひとつではありません。各ご家庭の事情や、犬の性格に合わせて就寝場所を決めてあげればいいでしょう。しかし!「どうやって寝かせるのがお薦めですか?」と聞かれたなら、クレートで寝かせることをお薦めします。
クレートは、犬の巣穴の形に似ているので、犬の休息場所として適しています。そしてクレートは持ち運びや移動ができますね。これから先、外泊をしたり、引越しをしたり、なじみのない環境で一晩過ごさなければならないような事態になったときにも、クレートで寝る習慣ができていれば、環境の変化を感じることなく一晩過ごしてもらうことができます。
たとえ犬と人間が同じ部屋で就寝するとしても、一緒のふとんで寝るのではなく、クレートで就寝させる習慣にすれば、別々の部屋で就寝させなければならなくなっても、いつも使っているクレートがあれば、犬はストレスを感じることなく過ごすことができるのです。
犬のしつけには厳しさが大切です。しかしそれは、叱ったり、叩いたり、犬に向ける厳しさではなく、一貫した態度が取り続けるという、飼い主さんが、ご自身に向ける厳しさです。
一生懸命に鳴いたり、吠えたりして訴える犬を無視するということは、ときに叱るよりも人間にとって辛いことかもしれません。しかしながらそれは、「いい子にしているときに、いつもの倍くらい遊んであげよう」という気持ちに変えてあげてください!
ここでご紹介をした対処は、無駄吠えの蘭hにもつながります。今対処をしなければ、これから先も人間に何かを伝えたいことがあるときに、吠えることに頼りがちになるかもしれません。長く続いた習慣を変えるということは、人間にとっても、犬にとっても大変なことです。子犬のうちであれば、より短時間に望ましくない習慣を絶ち、望ましい習慣を形成してあげることができます。それは、人間のためであり、あなたの犬の将来のためですね。
お母さんは、鳴いてもサークルから出さないけれど、お父さんは出してしまう・・。もしこんな対応をしていたら、子犬は結局鳴けばサークルから出してもらえると学習してしまいますね。犬の行動パターンは、人間の対応によっても決定されていきます。ぜひ「鳴いたときにはどのように対処するのか」ということをご家族全員でよく話あって、犬に対して一貫した態度が取れるようにしましょう。
人がいなくなると途端に鳴きだしたり、夜鳴きがひどかったり・・あなたの犬は新しい環境にまだ慣れず、落ち着かない日々を送っているかもしれませんね。
こんなときには、緊張が続いていいたり、ぐっすり寝れなかったり、体調を崩しやすいものです。しかも、抵抗力のまだまだ弱い子犬です。毎日のおしっこやうんちの状態、食欲、変わった様子がないかなど、よく観察してあげてください。そして、気になることがあったら、すぐに獣医さんに相談しましょう。
子犬はたくさん食べて、たくさん寝て大きくなっていきますね。体重を測るごとに、少しずつ、でも確実に成長しているのがよくわかるでしょう?
心の成長も同じです。どうすれば人間にたくさん遊んでもらえるのかな、スキンシップしてもらえるのかな、と日々試行錯誤しながら、毎日少しずつ成長しています。犬と人間は、最初からうまく共存できるものではありません。ご近所やお友達の家の犬はいい子なのに・・とお嘆きかもしれませんが、最初からそうだったのではなく、みな同じ道を歩んできています。
今は、子犬の相手でフラフラになっているあなたも、1年経ち、2年経つ頃には、子犬の頃が懐かしい・・と手がかからなくなったことをちょっぴりさびしくさえ思えるようなときが必ずやってきます。そのときに、人間に対して生き生きと豊かな撫薰ナはたらきかけてくれる犬でいてもらうために、ぜひここでご紹介した方法を参考にしてください。心の成長には、体の成長と同じくらい、いえ、それ以上にこまやかな心くばりが必要です。あなたの犬が、体だけでなく、心も大きく伸びやかに成長しますように・・。