子犬の甘噛みのしつけ

子犬を飼い始めて多くの人がぶつかる問題が「甘噛み」である。「噛む犬になってしまったらどうしよう」と心配な方も多いことだろう。しかしそこで叱ったり押さえつけたりすると逆効果であるということをご存知だろうか。犬も人も楽しく取り組める新しい噛み癖克服法をご紹介する。

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Q.「犬の甘噛み」解消に効果的なのはどれ?

1. 無視する
2. 音をさせる
3. おやつをあげる
4. その他

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どうして子犬は噛むのでしょうか?

「甘噛みが激しいのですがどうすればいいのでしょうか?」

「噛まれて手や腕が傷だらけです・・」

子犬があなたの家族の一員になったその日から、まず間違いなく、ほとんどすべての飼い主さんが悩まされるのは「子犬の噛み癖」です。

子犬は日に日に大きくなっていきますね。それと同時に、あなたの家庭でいろいろな経験をしながら、どうすれば人間とうまく生活していけるのか、どう振舞えば人間にかわいがってもらえるのか毎日学習しています。人間も子どものときには、けんかをしたり、いじわるをしてみんなから遊んでもらえなくなったり、いろいろな経験をしながら大きくなりますよね。それと同じです。

子犬が噛んでくれるということは、噛んではいけない、ということをしつける絶好のチャンスです。噛んでくれなければ、噛んではいけない、としつけることができません。

どのようにしつければいいのでしょうか?

そんな子犬に必要なのは、人間とたくさん遊ぶこと、そして、遊びながら噛んではいけない、ということを学習してもらうことです。

もしあなたの犬が、母犬のもと、兄弟たちと一緒にいたら、どんな生活を送っていたでしょうか?毎日、兄弟たちと転げ回って、疲れ果てるまで遊んでいるはずですね。そして「遊ぼうよ!」と噛んだり、しつこく絡んだら「キャンキャン!」と兄弟たちは逃げて行ってしまうかもしれません。母犬に噛み付いたら「ウゥ」と冷たく唸られて、寂しい思いをするかもしれません。こういう体験を通じて、噛んだら遊んでもらえなくなるんだなあ・・どうすれば群れの仲間たちと仲良くできるのかな・・ということを学習するのです。

家族の一員に迎えられたあなたの犬はどうでしょうか?遊ぶことが大好きなはずですね。そして遊びながら、群れの仲間(= あなたの家族)に楽しく遊んでもらうためにはどう振舞えばいいのか、学習していくのです。それにはこんなやり方が有効です。

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毎日犬が疲れるまで存分に遊んであげましょう。ボール投げや、ひっぱりっこなど、おもちゃを使って遊びながら、「噛んだり、飛びついたり、吠えたりしなければ人間と楽しく遊んでもらえるよ」、そして、「人間の手や腕を噛んだら、人間に遊んではもらえなくなるよ」ということを伝えてあげましょう。

そしてそれを伝えるには、楽しく遊ぶ時間を存分に持つこと、そして、望ましくない行動をとったら、遊びを中断して相手にならないこと、無視することが有効です。

どうして「無視」が効果的なのでしょうか?

子犬は、遊びたくて、かまって欲しくてたまらないのですね。あなたの手を噛めば、あなたの体に触れることができるだけでなく、話かけてもらったり、体に触ってもらったり、うれしいことがたくさん起こるのです。例えあなたは、叱ったり、罰を与えているつもりでも、犬には「体を触ってもらった!」「話かけてもらった!」「かまってもらった!」と感じているかもしれません。

噛んだときには、犬に背を向け、知らん顔をすることにします。どうなるでしょうか?犬にとって、「体を触ってもらった!」「話かけてもらった!」「かまってもらった!」といううれしい出来事が一瞬のうちに消えてしまうことになりますね。

逆に、人間の手を噛んでいないときや、噛んでもかまわないおもちゃを噛んでいるときには、たくさん話かけ、体を撫で、楽しく遊んであげることにします。犬はどう感じるでしょうか?ずーっとこのままご主人さまに遊んでもらいたいなあ・・と思いますね。

- 人間を噛む --> 無視をされて遊びが中断される
- 人間を噛まない --> 楽しく遊んでもらえる

この繰り返しによって、犬は、人間に楽しく遊んでもらうためには、人間の手や腕を噛んではいけないんだな・・と学習していくのです。

どのように無視をすればいいのでしょうか?

まず、噛んでもかまわないおもちゃを使って遊んであげるようにするといいでしょう。ペットショップでいくつかおもちゃを購入し、どんなタイプのものが好きなのか、よく噛んで、よく遊ぶのか、観察してみるといいですね。そして遊ぶときには、できるだけ人間ではなく、そのおもちゃを噛むように誘導してあげましょう。

楽しく遊んでいる最中に、人間の手や腕などを狙って噛んで来たら、プイッと無視をします。くるっと後ろを向いて犬に背を向けてもいいでしょう。噛まれた手や腕を隠して、だまって視線をそらしてもいいでしょう。しつこく飛びつくようであれば、その場を立ち去ったり、姿を隠してしまってもいいでしょう。とにかく、これ以上噛ませないようにすること、犬を喜ばせないこと、飼い主さんから注目してもらっていると思わせないこと、遊んでもらっている、かまってもらっているとは感じさせないことがとても大切です。

そしてしばらくしたら、何事もなかったかのように遊びを再開してあげてください。そしてまた人間の手や腕を噛んできたら無視です。これを何度も何度も繰り返すことで、

- 人間を噛む --> 無視をされて遊びが中断される
- 人間を噛まない --> 楽しく遊んでもらえる

この条件を学習していきます。

それと同時に、遊び方もきっと上手になっていきますね。最初は、人間の手や腕を狙ってきたときに無視するだけでも助ェかもしれません。でも「人間の手や腕を狙って噛んだら遊んでもらえなくなるんだな・・」ということがわかってきたときには、以前よりは、ずーっと遊び方が上手になってきているはずです。そのときには、狙っているつもりでなくても噛んでしまったときや、ほんのちょっと歯があたっただけでも、無視をする・・というように、要求するレベルを徐々にあげていくといいでしょう。

この方法であれば、叱ったり、無理やりやめさせようとする必要は全くありません。体罰を与えたり、怒鳴ったりしなくても、犬自身が、どうすれば遊んでもらえるのか、群れの一員として仲良く暮らしていけるのか、学習していきます。そして最終的には、決して人間に歯をあててはいけない、ということを学習させることができます。

そして何より、たくさん遊び、たくさん誉められて育った子は、人間のことが大好きになりますね。どうすれば、人間にかわいがってもらえるのか、上手にコミュニケーションできるのか知っているので、撫薰フ生き生きとした子に育つのです。

遊ぶことが大切・・というもうひとつの理由

遊ぶということには、もうひとつ意味があります。

子犬は、とてもエネルギッシュですね。たーっぷり遊んで有り余るエネルギーを発散させてあげると、しつけがしやすくなります。噴火直前のマグマのようなエネルギーを抱えている状態で、いくら「やめてちょうだい!おとなしくしてちょうだい!」と言っても難しいのです。でも、運動量の多いボール投げのような遊びを存分にした後だったらどうでしょうか?「遊んで遊んで!」と噛んだり、飛びついたりしてきても、ちょっと無視をするだけで、落ち着いてくれるかもしれません。

そして、有り余るエネルギーを発散させるということは、無駄吠えなどの問題行動を蘭hするという意味においてもとても大切です。

絶対にやってはいけない'噛み癖克服法'

決してやってはいけないことがあります。それは、叱る、首根っこを抑える、無理やりひっくり返して押さえつける、鼻をピンとはじいて痛がらせる、叩く・・など、罰を与えることです。

あなたの犬はまだ、どうすれば人間にかわいがってもらえるのかよくわかっていないですね。そのときに罰だけがあたえられると、どうすればいいのか、ますますわからなくなってしまいます。犬にできることは、罰が与えられないように、自分の身を守ることです。その結果、唸ったり、噛みついたりすることで自分を守ることを学習してしまうかもしれません。また、あなたが近寄ったり、手を差し伸べたりしても、警戒して嫌がるようになるかもしれません。

子犬は体も小さく、罰のような辛い刺激に免疫がありませんね。大きな大人が大きな手でガツンと、あるいは大きな声でドカンと罰を与えると、とても効果があるのです。しかし、罰を使う前に、立ち止まって考えてみてください。

罰を与えるだけでは「どうすれば、誉めてもらえるのか。遊んでもらえるのか。」ということを学習させることはできません。犬が学習することは、「どうすれば罰を逃れられるのか」ということだけなのです。「大人に噛むと怒られるけど、子どもなら大丈夫みたいだな・・」「家の中だと叩かれるけど、公園だと叩かれないな・・」というように・・。これは人間でも同じですね。いつもいじわるをしたり、嫌味を言ったり、沫ヘを振るったり、自分に'罰(= 嫌なこと)' を与える人や物が目の前にあったら、どうしたら避けられるかな・・と自然に考えるものですよね。

あなたの犬は、厳しく罰するあなたに対しては、決して噛まなくなるかもしれません。でもそれは、あなたから罰を与えられないようにするにはどうすればいいのか・・ということを学習しただけなのです。噛むかわりにどのように振舞えば人間にかわいがってもらえるのかな、ということは学習していませんね。その結果、他の人には噛む子になるかもしれません。子どもや、お年寄りなど、自分に罰を与えることができない相手には、歯向かうかもしれません。

これでは折角の'しつけ'も逆効果ですね。あなたの体罰は、小さな子犬には大きな効果があるかもしれません。でも「一時的には効果がある」という利点だけを取り上げて罰を使用することは決してお薦めできません。ぜひ、罰ではなく、ご紹介した方法で、犬自身に「どうすれば人間と楽しい時間を過ごすことができるのか」ということを考え、学習する機会を与えてあげてください。

一緒に「いけない」をしつけてみましょう!

無視すると同時に「No」「だめ」など、翌゚決めておいた「いけない」の号令を言ってあげると、その言葉の意味もしつけることができます。このようにして「いけない」をしつけておくと、必要以上に「だめっっ!!」と人間が叫ばなくても、「だめ」と言われたら無視されちゃうんだな・・さびしい思いをするんだな・・やめなくちゃいけないな・・と理解することができるようになります。

「いけない」を一緒に言うのは、無視される、ということがわかってきてからがいいでしょう。無視される、ということがわかっていないときに「いけない」を言うとどうなるでしょうか?「いけない」の意味を知らない犬は、自分の「遊んで!」のアクションに、応答してくれているのかな、と誤解してしまうかもしれません。

「どうも、まずいことをすると無視されてしまうようだぞ・・」ということに気が付きだしてから、無視すると同時に「いけない」の号令を言う、ということでも決して遅くはありません。

1回あたり、どのくらいの時間無視すればいいのでしょうか?

長い時間、無視をする必要はありません。噛んだり、まとわりついたり、飛びついたりしなくなったら、何事もなかったかのように遊びを再開してあげてください。

無視をするのは、

- 人間を噛む --> 無視をされて遊びが中断される
- 人間を噛まない --> 楽しく遊んでもらえる

この条件を学習してもらうためですね。それには、繰り返し繰り返し、練習をする必要があります。長い時間無視をして、学習のチャンスを減らすより、良い子にしていたらすぐに遊びを再開し、学習のチャンスをたくさん与えてあげた方がいいですね!

注意:
無視するのをやめ、遊びを再開してあげるときには、犬が、噛んだり、飛びついたりなど、望ましくない行動をとっていないことに気をつけてましょう。望ましくない行動をとっているときに、遊びを再開してあげると、逆に、噛んだり、飛びついたりしたら、遊びが再スタートするんだな・・と犬が学習してしまいます。

無視されていることに気が付いていないようなんですが・・

子犬は、あなたの家にやってきたその日から、無視されると寂しい、困ったな、と思うわけではありません。ただ、じゃれて甘えるだけのあなたの子犬も、あなたと多くのかかわりを持つことによって「人間に遊んでもらえるって楽しいことなんだな」「群れのメンバーとして注目してもらわなければ困るんだな」と徐々に理解し、人間との結びつきが徐々に作られるのです。

そして、そうなったときに始めて「無視する」ということの効果が現れるのですね。人間との結びつきが薄い状態では、無視されても寂しい、困ったな、とは思ってもらえませんね。

しつけの第一歩は、無視をされて寂しいな、と思ってもらえるような人間との結びつきを作ることなのです。そしてこれは、これからあなたが犬と生活していく上で必要不可欠なことですね。今あなたが、「無視しても効果がないな・・」と諦めて、人間との結びつきを作ることをやめ、叱ったり、罰を与えてしまったらどうなるでしょうか?あなたは、あなたの犬と生活をしていく中で、人間にとって望ましくないことが起きたときに、いつでも叱ったり、罰を与えることでしか対処できなくなってしまいます。

犬は、元来、群れで生活をする社会的動物です。群れのメンバーであるあなたの家族からの注目を得て初めて、家庭犬として満ち足りた生活を送ることができます。従って、今、「無視」をしても何の効果もないあなたの犬も、根気よくしつけしていけば、必ず「無視」の効果を得られる日がやってきます。

「無視しても効果がない」と簡単に諦めてしまうのではなく、まずは、「無視をされて困ったなと思ってもらえるほどに、楽しい時間を一緒に過ごしているかな」ということをぜひ考え、根気よくしつけしてあげてください。

無視が効果をあげるには、人間も、犬のためにたくさんの時間と、労力を割かなければなりませんね。子犬を育てるということは大変なことです。それでも、こうした過程を経て、犬と人間との間に絆が生まれ、あなたの犬は、あなたのことをリーダーとして慕い、あなたから誉められたい、あなたと楽しい時間を過ごしたい、とあなたに注目するようになっていきます。あなたの努力に、あなたの犬は必ず応えてくれるのです。