足したり引いたり(3)

犬を上手くしつけるのに大切なこと。それは愛情を持って犬をしつけること。実際に深い愛情を持って犬をしつけた人の体験が元になっているこの連載。犬のしつけに悩んでいる人にぜひ読んで欲しい。

Q.あることをすると犬のストレスが減り、しつけにいい影響を及ぼすと言われていることがあります。それは何?

1. 声かけ
2. おやつ
3. マッサージ
4. その他

足したり引いたり(3):つつみこむように(第111号, 2009/3/27)

しかし、それは思わぬ方向に進んでいったのです。

いつものペットショップ。普段は素通りする洋服のコーナーに足を留めてみると、そこにはかわいらしい洋服がズラリ。しかし・・洋服嫌いのウチの犬のこと。見れば見るほど『引き算』したくなってくる!

「おしゃれな飾りボタンだなぁ・・しかし待てよ。このゴツゴツに違和感を抱くかもしれないぞ」。
「あ、ポケット付きでかわいい!・・しかし待てよ。その分だけ生地が厚くなって動きにくいかもしれないぞ」。

そしてひとつの結論に達したのです。犬に聞いてみることができない以上、ウチの犬が洋服の何に違和感を感じて着ることを嫌がっているのかわからない。それならここはひとつ、可柏ォのある要素をすべて『引き算』しようじゃないか! 静電気が起きにくい綿の生地に、前足を通す穴が2つ。胸とお腹をスナップで留めるだけの究極のシンプルデザイン。

私は裁縫道具を持ってくると、家にあった既製品の犬の服を型紙にして、綿100%のバスタオルをチョキチョキ・・・・いいえ、そこは正確にお話しましょう。それをしてくれたのは母。ウチの犬のことを孫のようにかわいがってくれている母。私から型紙代わりの洋服とバスタオルを受け取った母から、数日後、小包が届きました。

「薄手の方が早く慣れるんじゃないかと思って。よかったらこれも使って」。そこにあったのは、私が送ったバスタオルよりさらに薄手でやわらかな肌触りのガーゼ生地で作られた洋服。「スゴイ! 生地の厚さが『引き算』してある!」。

包みの奥にはさらにもう1枚。私が送ったものよりもやや厚手の生地、防寒バッチリ、フードのついたタイプ。「お母さんさすがだなぁ・・」。薄手のものから厚手のものへ。シンプルなデザインから飾りのついたデザインへ。そこには、少しずつ『足し算』しながら慣れていくことができるように考えられた3段階の洋服があったのです。

「なんでもそうなんだよなぁ。いつものオモチャを前にすわれるようになったら今度は『足し算』。少しずつ興奮しやすいオモチャで練習していくもんなぁ。短い距離ボールが運べるようになったら今度は『足し算』。少しずつ距離を伸ばしていくもんなぁ・・」。

元気で迎えられたことを、こんなにも喜ばしく感じられる春があったかな。洋服を作ってくれた「お母さん」、「1日でも早く」と寒い中それを郵便局まで持って行ってくれた「お父さん」、その洋服を車の助手席、ひざに乗せた犬の背中にいつもさりげな~く羽織らせて慣らしてくれた「ウチの旦那さん」、せっせせっせとあそんだ(*1)この「私」。この冬キミを暖めていたのは「いつまでも元気でね」みんなのその想いだったんじゃないかな・・そんな気がしてならないよ。(おわり)

*1: 詳しくはサイトで掲載中の「洋服嫌いの犬」で!