一期一会(2)

犬を上手くしつけるのに大切なこと。それは愛情を持って犬をしつけること。実際に深い愛情を持って犬をしつけた人の体験が元になっているこの連載。犬のしつけに悩んでいる人にぜひ読んで欲しい。

Q.あることをすると犬のストレスが減り、しつけにいい影響を及ぼすと言われていることがあります。それは何?

1. 声かけ
2. おやつ
3. マッサージ
4. その他

一期一会(2):「ながら」の秘密(第107号, 2009/1/20)

ううん、別にそれは、狙ってたわけじゃないの。ホントに偶然。ただの偶然。

ウチの犬が子犬だった頃、私は忙しい生活を送っていました。朝起きると散歩に出かけ、出勤までウチあそび。会社でまる1日働き、仕事を終えまっすぐ家に帰ると・・

私を待ち受けているのは“カレ”。留守番中に英気を満タンにしたカレは、私の顔を見るなりエンジン全開! 飛びつく。むしゃぶりつく。目を放してふと振り返れば、あるはずのものがそこになく、ないはずのものが本来の形を留めないままそこにある・・。

「もっとあそんで!」「もっとかまって!」。いつでも私に全身全霊でぶつかってくるキミを、私も真正面で受け止めたい。「でもね、夕食だって作らなくちゃいけないし、ニュースくらいはテレビで観たいよ」。だから私は、洗濯物を干しながら、テレビを観ながら、部屋の一番奥までおもちゃを投げ、戻ってきた犬をほめてあそぶようになったのです。「覚えたてのおすわりだってもっとほめてあげたいのに、帰ってから寝るまでの時間はあまりに短い!」。だから、立ち上がったついでに、ドアを開けるついでに、こう言うようになったのです・・「おすわり♪」。

それはいわば苦肉の策。なのにそれが、むしろいい結果を招いていたなんて!

「おすわり」も「おいで」も、「ゴハンの前に」とか「ごほうびを準備したとき」とか、同じ状況でしか言わないと、犬はその条件下でしか上手にできなくなるのです。なぜって? 「ゴハン以外のとき」「人間がごほうびを持っていないとき」に、ほめられたことがないから!

そうなのです。何かをしながら、何かのついでに、思い出したようにほめるチャンスを作るその暮らし方は、場所を選ばず、状況を選ばず、いつでも私の声に耳を傾けることができるようになる理想的な環境だったのです。

「靴下を履きながらキミに言った“すわっててえらいね”にも、歯を磨きながらモゴモゴ言った“よく来たね”にも、みんな意味があったんだね」。それに気づいてからの私は、ますます忙しいよなぁ。私のひと言が、キミにどんな学習を促すんだろうと思ったら、どの一瞬も見逃せないんだもの!・・え? 『Turtle Walk』がこんなに遅れたのもそのせいかって? 「ボクのせいにしないでよ」ってキミに笑われそうだな。 (つづく)