ケミストリー(2)

犬を上手くしつけるのに大切なこと。それは愛情を持って犬をしつけること。実際に深い愛情を持って犬をしつけた人の体験が元になっているこの連載。犬のしつけに悩んでいる人にぜひ読んで欲しい。

Q.あることをすると犬のストレスが減り、しつけにいい影響を及ぼすと言われていることがあります。それは何?

1. 声かけ
2. おやつ
3. マッサージ
4. その他

ケミストリー(2):衝撃の事実(第104号, 2008/11/11)

「こりゃ大変だ! “ワル”だぞぉ(笑)」。

そう言ったのは、我が家に子犬がやってきて初めてのお客さま。犬が大好きな彼女をしてそう言わしめたあの子のしたことと言ったら! ひとり興奮して走り回る! 彼女のおしゃれなセーターにかぶりつく! お客さまの大事なカバンの中をイタズラして放さない・・。

私は思っていました。この子は「気が強い」のだと。それゆえすぐ「自分の方がエライ」と思ってしまうのだと。だからその「性格」を、その誤った犬の「認識」を、変えてやる必要があるのだと。

犬の『内側』を変えようとしていたあの日々の、なんと苦しかったことか。自分を下に見てるんだと思うと、何をされたというわけでもないのに腹立たしくなる。「この子の性格は変えなきゃいけないほど悪いのか?」ありのままを愛せない自分がイヤになる・・。

そんな私にとって、それは衝撃の新事実! 「犬がなぜそう行動するのか?」の答えは、犬の『内側』ではなく『外側』にあるという新事実! 無理やり取り上げられれば、唸ったり噛みついて抵抗することを犬は学習する。「気が強いから抵抗する」のではなく、学習されたその行動が「気が強い犬」に見せているのだという新発想!

そして私は気づいたのです。もし人間がその犬から無理やり取り上げることをやめ、ごほうびととりかえっこするようにしたら? 人間に渡すことを学習したその犬のことを、もう誰も「気が強い」「自分の方がエライと思ってる」とは言わないだろう・・。

犬を『内側』から変えようとすることが、犬にそして人に、どれほど大きな負担となってのしかかることか。しかし、犬にどう接するか、どんな経験を犬に積ませてあげるか、犬を取り巻く『外側』を変えることで、犬は自然と変わっていくのです。「な~んだ。私が変わればいいんだ! キミの問題は、私たち家族の問題だったんだ」。あの子を迎えて数ヶ月、ようやく私は思えたのです「キミと仲良くなれそうだ」と。

あのとき「衝撃」だったその事実が私の一部と化すまでの間に、何度自分に言い聞かせたことだろう。「犬を変えようとしてはいないか? 逆だぞ逆。この子にイイ学習を促してあげるために、自分がどう変わればいいかを考えるんだ。それができたときこの子は自分で変わり始める。私が変えようとしなくても」。私の変化がキミを少しずつ変えていく・・私たちの間に美しい化学反応が起り始めた瞬間でした。(つづく)