ケミストリー(1)

犬を上手くしつけるのに大切なこと。それは愛情を持って犬をしつけること。実際に深い愛情を持って犬をしつけた人の体験が元になっているこの連載。犬のしつけに悩んでいる人にぜひ読んで欲しい。

Q.あることをすると犬のストレスが減り、しつけにいい影響を及ぼすと言われていることがあります。それは何?

1. 声かけ
2. おやつ
3. マッサージ
4. その他

ケミストリー(1):実りの秋(第103号, 2008/11/1)

昨日も歩いたその道の、その場所の匂いを、今日もまた熱心にかぐのはなぜだろう・・。

我が家の小さな庭に日が差し込み始める午前11時、犬が扉と私の間を行ったり来たりして、庭に出たいとアピールを始めます。不思議なんだよな。扉で閉ざされたこの部屋から、庭の日当たりはわからないはずなのに。

勢いよく庭に飛び出したカレが向かうのはプランター。庭の植物を「イタズラ」したくてたまらないキミのために私が作ったプランター。ミントにワイルドストロベリーにラズベリー・・「イタズラしてもかまわない植物」でいっぱいにしたプランター。

昨日のつぼみが今日花になり、昨日咲いていた花が今日実る。風が拭き、枝が伸び、昨日隠れていた葉が、花が、実が顔を出す・・。このプランターにあるのは、刻々と変化し続ける小さな小さな大自然!

私は思う。「犬にとってこれ以上魅力的なものがあるだろうか?!」

毎日飽きずにプランターを覗き込むのは、昨日とは違う形、違う匂い・・犬にとって常にそれが「新しい」から。私が採って差し出したひと粒のイチゴよりも、自分で探し出したそれを食べる顔の方が生き生きとしているのは、「自分で見つけること」が楽しいから。

「空き箱や封筒で、新しい匂い、ふたつと同じ形のない“新鮮なおもちゃ”を作ってみよう。作ったおもちゃはハウスやスリッパの中に隠しておけばいい。キミが“見つける楽しみ”に出会えるように」。

私は負けじと「自然」を真似してみるけれど、最後の最後にやっぱりかなわなくなる!明日になれば植物たちはまた新しい「顔」を見せ、犬を夢中にさせてくれる。でも私の作ったおもちゃは、部屋に転がったままにしておいても新しくはならないんだなぁ・・!

なぜだか「11時」を覚えてしまった犬の姿を、庭に出るなり一番にプランターに向かう犬の姿を、その姿を眺めながら私は確信する。犬を変えるのは、犬を取り巻く世界だと。変わっていくのは犬自身であるに違いない。しかし、犬がひとりで変わっていくわけじゃない。外の世界で起こる「変化」がキミを「変化」させていく。キミの内と外とが美しい化学変化を起こしながら。(つづく)