[犬愛しつけ法]恐怖症克服術1

犬を上手くしつけるのに大切なこと。それは愛情を持って犬をしつけること。実際に深い愛情を持って犬をしつけた人の体験が元になっているこの連載。犬のしつけに悩んでいる人にぜひ読んで欲しい。

Q.あることをすると犬のストレスが減り、しつけにいい影響を及ぼすと言われていることがあります。それは何?

1. 声かけ
2. おやつ
3. マッサージ
4. その他

運動会の悲劇(3):方程式(第102号, 2008/10/21)

しかしそれも、2時間が限界でした。 運動会の会場から聞こえてくるスターターピストルの音をウチの犬がひどく怖がることに気づいたとき、いつもの私なら「慣らす」ことで楽しく乗り越えようとしたはずでした。「ピストルの音を録音し、はじめは小さな音で、少しずつ音量をあげていけば慣れるはずだよな・・」。 しかし私には、それがどうしてもできませんでした。だってそれは、命を脅かしかねない「怖くてしかるべき音」。それを「怖くない音」にしてしまうことが、本当にこの子のためになることなのか、私にはわからなかったのです。 だから運動会の1日を、ラジオのボリュームをあげ外の音をシャットアウトして過ごすという方法は、我が家にはピッタリ。しかし、その限界は意外と早くやってきたのです。犬に?いいえ、私に! 「あー頭痛くなってきた・・」私は2時間もすると、「18」だったボリュームを「16」にしないではいられませんでした。しかし犬がいけません!途端にしっぽを下げ外の音を気にし始める・・「仕方ない、“17”にしておくか・・」。しかしそのたった1時間後、卵z外の展開が待っていたのです。「“16”じゃダメだってことはわかっている。でも耐えられないの、ゴメン!」。再びボリュームを「16」に下げてみると・・ 「これは一体、どういうこと?!」。なんと犬が平気な顔をしているではありませんか! それは、私が一旦は諦めた「慣れ」でした。キライな音の上にかぶせる音を少しずつ小さくしていくことで、キライな音は犬の耳に少しずつ大きく届くことになります。「私は結局“慣れるための方程式”どおりのことをしてたんだな」。 それに気づいたときの安堵感といったら!「運動会はたった1日のことだから、こうやって部屋にこもっていれば事足りる。でももし、ここが日常的に『威し銃』(*1)が鳴っているような場所だったら?私にはやっぱり、それを聞かせないようにすることしかキミにしてあげられないのかな」・・それだけが心配だったから。 「これが毎日続いたとしても、私たちはきっと大丈夫。こうやって上にかぶせる音を少しずつ小さくしていけばいいんだもの!」。急に気持ちが軽くなって、ゴロンと床に「大」の字になった私の目に飛び込んできたのは、窓の外、泳ぐようにゆっくり流れるいわし雲。「はじめて気づいたよ。そういや今日は、こんなにいい天気だったんだなぁ」。(おわり) *1: 『威し銃(おどしづつ)』 実った穀物を荒しにくる鳥を威して追い払う仕掛けのこと(合本 俳句歳時記より)。ここでは、畑や山などで耳にする空砲のことを意味して使いました。