犬を上手くしつけるのに大切なこと。それは愛情を持って犬をしつけること。実際に深い愛情を持って犬をしつけた人の体験が元になっているこの連載。犬のしつけに悩んでいる人にぜひ読んで欲しい。
1. 声かけ
2. おやつ
3. マッサージ
4. その他
「だって、面倒なんだもの」。
「1回くらいどうってことないでしょ」。
ついついやってしまいそうになるんだ。じっとしていて欲しいからといって押さえつけてしまうこと。こっちに来ないからといって無理やり抱き上げてしまうこと。まっすぐ歩いてくれないからといって簡単にひっぱってしまうこと。離さないからといって力ずくで取り上げてしまうこと・・。
そんなときの私はまるで「北風」みたい。大風を吹かせて旅人から上着を脱がせようとした、あの「北風と太陽」の北風みたい。(*1)
腕力でかなわないと知っている相手なら、こんなやり方しないのに。「私はキミに甘えてるんだ。キミが小さいのをいいことに。無理なことをしても、噛みついたりしない犬なのをいいことに。顔をそむけ身を硬くし、楽しそうな撫薰ヘ決してしていない、そのことからは目をそむけて」。
なれるかな、私も「太陽」に。北風には出来なかった旅人に上着を脱がせることに、暖かな日ざしを注ぐことで成功した太陽に・・。
「行かないもん!」・・「おいで」って言ってるのに犬が来ない。私は、何もない床を覗き込みながら大きな声でこう言ってみる!「あれぇ、なにか落ちてるなぁ」。ほら!好奇心のアンテナをピンと伸ばしたあの子がやって来たよ。「あっここにあるのはごほうびだ!キミにあげるよ。よく来たね」。
「ヤダヤダ!」・・目やにを取ってあげるだけなのに、どうして嫌がるの?私は、ごほうびをあげながら少しずつさわっていく・・ほら、何も怖くないでしょ。じっとしてたらほめてもらえて楽しいでしょ。
北風に吹かれた旅人が、寒さから身を守ろうと上着の前をしっかり押さえてうつむいてしまったように、私の吹かす「北風」は犬をかたくなにさせてしまう。ときに犬を、身を守るために攻撃的にさせてしまう。
「行きたくないもん」「ヤダもん」・・キミの凍りついた心を溶かすのは「北風」ではなく「太陽」。わかっているはずなのに、忙しい毎日の中でついつい北風を吹かせそうになる私がいる。でも私の中には、あの子の太陽になれる「私」もきっといる・・いや必ずいる!(おわり)
(*1) イソップ寓話「北風と太陽」より