し・る・し(3)

犬を上手くしつけるのに大切なこと。それは愛情を持って犬をしつけること。実際に深い愛情を持って犬をしつけた人の体験が元になっているこの連載。犬のしつけに悩んでいる人にぜひ読んで欲しい。

Q.あることをすると犬のストレスが減り、しつけにいい影響を及ぼすと言われていることがあります。それは何?

1. 声かけ
2. おやつ
3. マッサージ
4. その他

し・る・し(3):キミの行く先 (第81号, 2008/2/21)

もう、危なくって仕方ない!

キミとの散歩は大変だ。好奇心くすぐられるものを見つけると「わぁ~い!」ってすぐ飛んで行っちゃうんだから。リードはいつでも短く持ってつないだ手を離すことは決してないけれど、それでも車が来ていたりするとヒヤヒヤするよ・・。

「車が来たらすわってくれると安心なのに」。

そこで私は「しるし」を作ることにしたのです。「“おすわり”と言われてすわったらほめる」の繰り返しで、「おすわり」を合図にすわることを学習するように、「私が立ち止まった後、犬がすわったらほめる」の繰り返しで、「私が立ち止まる」を「しるし」にすわるようになるはず・・。

私は車が来ると立ち止まり、犬がすわるまで待ってごほうびをあげることを繰り返しながら散歩をすることにしました。車がとっくに通り過ぎた後、私から「おすわり♪」とささやかれてやっとすわっていた犬も、少しずつ言われなくてもすわるように。

ごほうび、ゴハン、おもちゃ、ガム・・スキなものをあげる前、我が家では犬が自分からすわるまで必ず待ちます。そして待っている間、心の中でこう問いかけるのです。「さぁ、何をしたらもらえると思う?自分で見つけてごらん」。少しずつ早くすわるようになり、今じゃ私が待つより先に犬がすわってくれるように。

私は思う。犬のすわる「しるし」が、私の言う「おすわり♪」だけだったら、何かあるたびに「おすわり」と言わなければならない毎日に、苛立ち疲れきっていただろうな。よその人が持っているものに興味を示すたび、「飛びついて取るんじゃないか」とヒヤヒヤして、人とふれあう機会を作ることも億劫になっていただろうな。そうならずにすんでいるのは、「私が立ち止まる」「人間がイイモノを持っている」そんな「しるし」を自分で見つけてすわることを学習してくれたおかげなんだ・・。

それは、キミの命を守る「しるし」。いつ誰とでもキミがうまくやっていけるための「しるし」。音のしるし、場所のしるし、人間が何をしているかのしるし・・いつどこで何をきっかけに何をすれば楽しいことにめぐり会えるのか、キミの行く先を明るく照らすキミのための「し・る・し」。(おわり)