犬を上手くしつけるのに大切なこと。それは愛情を持って犬をしつけること。実際に深い愛情を持って犬をしつけた人の体験が元になっているこの連載。犬のしつけに悩んでいる人にぜひ読んで欲しい。
1. 声かけ
2. おやつ
3. マッサージ
4. その他
ほんの少し、席をはずしただけなのに。
部屋に戻ると、出しっぱなしだったカバンのファスナーが開けられ、ポケットティッシュが、ハンカチが、お財布が・・そこは散々なありさまと化していました。
「あちゃーーっ!」
私の大きな声と驚いた顔。犬はそんな私の反応を見るや、くわえたティッシュを旗のようにはためかせ、うさぎみたいに飛び跳ねながら、実にうれしそうに走り回ったっけ。「ワーイワーイ」・・まるで、秘密裏に企てた作戦が成功したときの子供みたいに。
「もう、キミにはかなわない!」。
「ほらっ、ボクのことつかまえて!」。事態を収束させようとしている私を相手に、追いかけっこを楽しんでしまうその無邪気さ。驚いたり、はしゃいだり、私の出方をうかがってみたり・・私が何かするごとに変化するその豊かな表情。
「こらぁ、つかまえちゃうぞ~ まてぇ~」
だから私はそれ以来、追いかける必要などない「おもちゃで遊んでいるとき」に、そう言ってふざけるのです。あのときみたいに、軽快な足取りではしゃぐ犬に「そんなコは、こうしてやるっ」とその横に倒れこみふたりでじゃれあう。
だって、そうやって遊ぶ機会がなければ、あの子は私に追いかけてもらいたいがために、カバンをイタズラしなければならなくなる。それがカバンなら拍子抜けするほどあっさり「はいはい・・」って返してもらう代わりに、おもちゃで遊んでいるキミのことなら一生懸命追いかけて、カバンをイタズラするのがバカバカしくなるくらい楽しませてあげるんだ。
どんなことも楽しんでしまうその才煤E・キミにはどうしたってかなわないよ。でも、負けてばかりはいられない。だって、キミが夢中になれることを私が見つけないと、キミは勝手に身の周りのものをおもちゃにし、楽しいゲームを作り出し、私を困らせるでしょ?(つづく)